密葬の定義は業界内で割れているものの、本来は「後日に本葬やお別れ会を行う前提で、先に近親者だけで行う葬儀」とされています。家族葬は参列者を家族や親しい人に限定し、後日の式を前提としない葬儀で、違いは規模ではなく後日の式の有無にあります。後日の式の形や費用負担、案内の段取りは企業の公表事例や国税庁の通達を参考に決めることが大切です。

密葬は本葬を前提に近親者だけで行う葬儀で家族葬と違う

密葬は後日に本葬やお別れ会を行うことを前提に、先に家族や近親者だけで行う葬儀です。大野屋やAll Aboutの説明では本葬ありきの葬儀として位置づけられています。

一方、家族葬は参列者を家族や親しい人に絞って行う葬儀で、後日の式を前提としません。つまり、密葬と家族葬の違いは規模ではなく、後日の式があるかどうかにあります。

ただし業界内には定義の統一はなく、葬儀社や利用者の中には密葬と家族葬をほぼ同じ意味で使う例もあります。葬儀社には「後日お別れ会をする予定」と具体的に伝えることが誤解を防ぐポイントです。

密葬と家族葬の違いの整理

項目 密葬 家族葬
後日の式の有無 本葬やお別れ会を後日に行う前提 後日の式を行わず当日で完結
参列者の範囲 家族・近親者中心 家族や親しい人に限定
規模 小規模だが規模で区別しない 小規模だが規模で区別しない
用語の使われ方 後日の式があることを前提にするが、同じ意味で使うこともある 密葬の言い換えとして使われることもある

密葬は必須ではなく家族葬・一般葬と使い分ける

密葬は法律で定められたものではなく、遺族や会社の選択によるものです。葬儀の形態は一般葬、家族葬で完結、密葬+後日の式の三つの選択肢があります。

後日の式を予定せずに家族葬で完結する例も多く、例えばハウス食品グループ本社の元社長の訃報では「お別れの会を執り行う予定はない」と明記されています。

密葬は、関係者を亡くなってすぐに呼べない場合や会社主催の社葬を予定している場合などに選ばれます。準備ができるなら一般葬や家族葬で完結することも可能です。

密葬は社葬や遠方死亡など準備に時間がかかる場合に選ばれる

密葬が選ばれる典型的な場面

場面 理由 根拠
社葬・お別れの会を予定している場合 会社主催の式の準備に時間がかかるため遺族が先に見送り 上場企業の公表事例で一貫して見られる
関係者が多く日程調整に時間がかかる場合 大人数を数日で準備するのは難しい All Aboutの傾向
年末年始や火葬場の都合で先に火葬が必要な場合 火葬場が休業する時期があるため 臨海斎場の例(2026年1月1日〜3日火葬なし)
故人が遠方で亡くなった場合 亡くなった土地で火葬し遺骨で帰って後日式を行う 法務省の届出地の説明、名古屋国税局事例

感染症の流行時や遺族が亡くなった直後に大勢の対応をしたくない場合にも密葬が選ばれることがありますが、これらは傾向や一般論として理解されます。

後日の本葬・お別れ会の時期に決まりはなく2〜4か月後が多い

後日の式の時期の例

出典 時期 種類
新横浜プリンスホテル 密葬から1〜1.5か月後 ホテルの目安
三井住友銀行 名誉顧問 逝去から約4か月後 企業公表事例
三井住友銀行 前会長 約2か月後 企業公表事例
三井住友FG 前社長 約3か月半後 企業公表事例
資生堂 名誉会長 約3か月半後 企業公表事例
日本郵政不動産 取締役相談役 約3か月半後 企業公表事例

本葬やお別れ会の時期に決まりはなく、四十九日より前か後かも例によって異なります。案内状の発送時期や会場の空き状況などを考慮して決めることが一般的です。

密葬と本葬で訃報の知らせ方は2段階に分ける

密葬の段階では、呼ぶ範囲を家族や近親者に限定し、知らせるが呼ばない人には「後日あらためてお別れの会を予定しております」と伝えます。これにより弔問や香典の混乱を避けられます。

会社の場合は社内向けに総務から通知し、社外への正式な訃報は本葬の案内状で行う例があります。企業の公表文は「密葬の儀は近親者にて相済ませました」と、密葬を終えてから公表する形が見られます。

問い合わせがあった際は家族で答えを一本化し、「葬儀は近親者のみで執り行います。後日お別れの会を予定しております」と伝え、日時や場所は控えます。SNSで先に広まった場合は家族または会社から一度だけ公式に告知する方法があります。

香典・供花は密葬・本葬で方針を揃え企業は辞退が多い

香典・供花の扱いパターン

パターン 密葬 本葬・お別れ会 向いている場合
A. 両方辞退 辞退 辞退 会社主催のお別れの会。企業事例はほぼすべてこれ
B. 密葬で辞退、本葬で受ける 辞退 受ける 遺族主催の本葬(宗教儀礼あり)
C. 密葬で親族のみ受ける 親族のみ 方針を別途決定 親族間の慣習がある場合

会費制のお別れ会もあり、会費制なら香典は不要とする例があります。案内状に辞退の記載がなければ参列者は香典を用意するため、辞退する場合は案内状に明記することが大切です。

社葬で受け取った香典は会社の収入にせず遺族の収入として扱うことが国税庁の通達で認められています。個人が受け取る香典のうち、社交上必要と認められるものには贈与税がかからない扱いです。香典返しの費用は相続税の葬式費用には含まれません。

本葬は宗教儀礼の式、お別れ会は会食中心で会場や費用が異なる

本葬とお別れ会の違い

項目 本葬(宗教儀礼あり) お別れ会・偲ぶ会(宗教色なし)
内容 読経・焼香など告別式と同様 献花・黙祷・会食。式次第なしの献花時間のみも
会場 寺院・斎場・葬儀会館 ホテル・宴会場・イベントホール
遺骨・焼香 遺骨を祭壇に置き焼香可能 ホテルは遺骨持込み不可、焼香不可が多い(要確認)
主催者 遺族または会社(社葬) 遺族、会社、友人・団体(発起人)
費用構造 葬儀社の祭壇・式場・人件費+宗教者へのお礼 会場費・料理・装花・司会・案内状など。宗教者へのお礼なしが多い
服装 喪服が一般的 平服指定が多い(企業事例は全て平服)
名称例 本葬、社葬、合同葬 お別れの会、偲ぶ会、献花会

ホテルのお別れ会では遺骨の持ち込みや焼香ができないことが多いため、会場ごとに事前に確認することが必要です。

費用は密葬は遺族負担、本葬は会社負担が一般的で税務は要確認

密葬・本葬の費用負担の一般例

項目 密葬 本葬・お別れ会
費用負担 遺族が喪主名義で契約・支払い 会社が主催する場合は会社負担
税務扱い 相続税で葬式費用控除の対象(遺族が負担した部分) 会社は社会通念上相当かつ通常要する部分を損金算入可能(税理士に要確認)

国税庁の通達では仮葬式(密葬)と本葬式の両方の費用が葬式費用に含まれますが、控除できるのは相続人などが自分で負担した部分のみです。会社が払った社葬費用は遺族の控除にはなりません。

遺骨・遺影・祭壇は後日の会場の制約を確認して決める

密葬で火葬後の遺骨は自宅で安置し、本葬で遺骨を祭壇に置くのが一般的です。ホテルのお別れ会では遺骨の持ち込みや焼香ができないことが多いため、会場ごとに事前に確認が必要です。

遺影は密葬で使ったものを本葬・お別れ会でも使用できます。ホテルでは写真展示パネルを作る例があります。

祭壇は本葬では葬儀社の祭壇を使用し、お別れ会では生花祭壇が多く、会場のスタッフと相談してデザインを決めることが一般的です。

案内状は1か月半前に発送し参列者リストは密葬の連絡記録から作る

ホテルの例では案内状は1か月半前に発送し、運営体制の決定や会場レイアウトの打ち合わせを進めます。

参列者リストは故人の住所録や会社の取引先リスト、密葬で連絡をくれた人の記録、所属団体の名簿などを元に作成します。

案内状に記載する主な項目(企業事例より)

項目 内容例
逝去日・享年 故人の逝去日と享年を明記
密葬の報告 密葬を近親者で済ませた旨
日時・会場 お別れ会の日時、会場名と地図
式の形式 献花のみなどの形式の説明
香典・供花・弔電の扱い 辞退の有無を明記
服装 平服指定が多い
主催者・問い合わせ先 主催者名と連絡先、事務局があれば記載

役所手続きは密葬段階で済ませ領収書の宛名を喪主にする

密葬段階での主な役所手続き

手続き 期限・ポイント 根拠・例
死亡届 死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは知った日から3か月以内)。死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村に提出 法務省
火葬許可 許可するのは市町村長(特別区は区長)。死亡届の受理と引き換えに火葬許可証が交付されるのが実務 大田区の例
火葬 死亡後24時間を経過した後でなければ火葬できない(妊娠7か月未満の死産を除く) 墓地埋葬法
国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費 葬儀を行った人が申請(世田谷区の例では領収書の宛名の人)。額は自治体ごとに異なる(世田谷区7万円、横浜市5万円の例)。時効は2年 世田谷区・横浜市の例
健康保険(会社員などの被用者保険)の埋葬料 葬祭費とは別の制度。埋葬料は5万円(協会けんぽ)。時効は2年 協会けんぽ

密葬費用は喪主名義で契約・支払いを行い、領収書の宛名も喪主にしておくと葬祭費申請や相続税控除の整理がしやすくなります。会社が密葬費用を負担すると手続きが複雑になるため注意が必要です。

遺族は喪主名義で密葬、後日の式は会社が主催も

読者の立場別の密葬・後日の式の対応例

立場・状況 密葬でやること 後日の式 香典・供花 費用 まず相談する先
親(会社役員・創業者)が亡くなった遺族 近親者で通夜・葬儀・火葬。喪主名義で契約 会社がお別れの会・社葬を主催。遺族は参加 お別れの会は辞退が企業事例の型。密葬は家族で決める 密葬は遺族負担、お別れの会は会社負担。線引きを書面に 葬儀社と会社総務
会社の総務担当(役員死亡) 遺族の密葬に会社代表が弔問。社内・社外通知の段取り 取締役会で社葬実施・費用負担決定。会場確保、案内状準備 案内状に辞退明記か決定。受ける場合は遺族収入として扱う 社会通念上相当な部分が損金。密葬は遺族負担 顧問税理士、葬儀社、ホテル
交友の広い親が亡くなった遺族 近親者で見送り。知らせるが呼ばない人に後日案内を伝える 遺族主催の本葬(寺院・斎場)や偲ぶ会(ホテル等) 本葬で受けるか会費制にするか選択 全額遺族負担。本葬も葬式費用に含まれる可能性 葬儀社、菩提寺
12月末に亡くなり正月明けに関係者を呼ぶ場合 年内か年明けに近親者で火葬(火葬場の休み確認) 1月中旬以降に本葬・お別れ会 本葬で一本化すると混乱少ない 遺族負担 葬儀社(年末年始対応記事参照)
親が遠方で亡くなった場合 亡くなった土地で近親者のみ葬儀・火葬。死亡届は死亡地で可 地元で本葬・お別れ会 地元の本葬で受ける 二か所とも葬式費用になる可能性 現地葬儀社、地元葬儀社、菩提寺
密葬で呼ばれていない親族・友人 呼ばれていなければ参列・弔問控える 案内を待つ 案内に辞退あれば持参しない — 遺族の案内に従う
お別れ会(平服・香典辞退)案内を受けた取引先 — 指定時間内に献花。式典なし形式が多い 持参しない — 案内状の事務局
後日の式を決めきれない遺族 密葬時は後日を明言せず「改めてご報告します」と伝える やらない場合は事後報告で「予定はない」と明記 — — 家族・親族

よくある疑問と回答

よくある疑問

Q密葬と家族葬の違いは何ですか?
A密葬は後日に本葬やお別れ会を行う前提で近親者だけで行う葬儀、家族葬は後日の式を前提にしない少人数の葬儀です。ただし同じ意味で使う人や業者もいるので、葬儀社には具体的に「後日お別れ会をする予定」と伝えると確実です。
Q本葬やお別れ会はいつ頃行うのが一般的ですか?
A決まりはありませんが、大きな会社のお別れの会は逝去から2〜4か月後の例が多く、ホテルでは密葬から1〜1.5か月後を目安にしています。四十九日より前か後かはケースバイケースです。
Q密葬に呼ばれていない場合、弔問に行っても良いですか?
A遺族が近親者のみと決めている場合は弔問を控え、後日の本葬やお別れ会の案内を待つのが一般的です。
Q密葬のときに香典は渡すべきですか?
A香典の扱いは遺族の案内に従います。辞退とあれば持参しません。会社主催のお別れの会では香典・供花・弔電をすべて辞退する例が多いです。
Qお別れの会の服装はどうすればよいですか?
A案内に平服指定があることが多いです。宗教儀礼を行う本葬の場合は喪服が一般的です。
Q社葬の費用はすべて会社の経費になりますか?
A社葬を行うことが社会通念上相当な場合に、通常要する部分が損金になります。密葬や戒名料、香典返し、納骨などは遺族負担とされる解説が一般的です。顧問税理士に確認してください。
Q密葬と本葬の両方の費用を相続税で差し引けますか?
A国税庁の通達では仮葬式と本葬式の両方の費用を葬式費用に含めますが、差し引けるのは相続人などが負担した分のみで、会社が払った分は含みません。
Q社葬で受け取った香典は会社のものですか?
A会社の収入にせず遺族の収入とする扱いが国税庁の通達で認められています。
Qホテルのお別れ会に遺骨を持ち込めますか?
A持ち込めない、焼香ができないホテルが多いとされます。会場ごとに事前に確認してください。
Q密葬のあと、本葬をやめても問題ありませんか?
Aやめても問題はありませんが、後日の式を予定していると伝えた人には「お別れ会は執り行わないことにいたしました」と知らせることが望ましいです。

密葬の準備と手続きの実務的な手順

密葬から本葬までの進め方

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    1. 方針の決定(亡くなった直後)

    後日の式を行うか家族で決める。葬儀社に近親者だけで葬儀し後日お別れ会を予定している旨を伝える。喪主名義で契約し領収書の宛名を喪主にする。

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    2. 密葬に呼ぶ人と知らせ方の決定

    呼ぶ範囲を家族・近親者に絞り、知らせるが呼ばない人には後日お別れ会の予定を伝える。香典・供花の扱いも決める。連絡した人を記録する。

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    3. 密葬の実施

    通常の葬儀と同じ内容で通夜・葬儀・火葬を行う。遺影は後日の式でも使えるものを選ぶ。火葬後の遺骨は自宅に安置する。

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    4. 後日の式の準備

    式の形(本葬・お別れ会)・主催者・費用負担を決める。会社主催なら取締役会決議を行う。会場の遺骨や焼香の可否を確認し、案内状を1か月半前に発送する。

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    5. 手続きと後片付け

    故人が加入していた保険に応じて、国民健康保険などの葬祭費か健康保険の埋葬料を申請し、密葬と本葬の領収書を保管する。費用分担を最終確認し、税理士に税務の扱いを相談する。

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見積もり前の確認リスト

  • 密葬か家族葬か後日の式をするか方針を決めて葬儀社に伝えたか
  • 密葬の契約・支払いは喪主名義で領収書の宛名を確認したか
  • 密葬に呼ぶ範囲と知らせるが呼ばない人への連絡文を用意したか
  • 香典・供花・弔電の扱いを密葬・本葬で統一して決めたか
  • 後日の式の形・主催者・費用負担の線引きを書面で整理したか
  • 後日の式の会場で遺骨・焼香・読経が可能か事前に確認したか
  • 案内状の発送時期(約1か月半前)と参列者リストの作成準備をしたか
  • 死亡届を死亡の事実を知った日から7日以内に提出し火葬許可証を受け取ったか
  • 葬祭費(国保など)または埋葬料(健康保険)の申請者と、領収書の宛名が合っているか確認したか
  • 費用負担と税務の扱いについて顧問税理士・相続税申告担当税理士に相談したか