配偶者を亡くしたあと、「旧姓に戻したい」「義理の親族との関係を整理したい」と考えたときに使うのが復氏届と姻族関係終了届です。名前が似ていて混同されがちですが、効果はまったく違います。復氏届を出しても姻族関係は残り、姻族関係終了届を出しても氏は変わりません。

なお、いずれも生存している配偶者が単独で行う届出で、離婚(生前に夫婦関係を解消する手続き)とはまったく別のものです。「死後離婚」という通称は姻族関係終了届を指す俗称で、戸籍上の配偶者だった事実や婚姻関係そのものが消えるわけではありません。

復氏届とは|旧姓に戻すための手続き

復氏届は、配偶者の死亡後に婚姻前の氏(旧姓)へ戻るための届出です(民法751条1項・戸籍法95条)。提出先は自分の本籍地または住所地の市区町村役場で、法律上の期限はなく、配偶者の死後であればいつでも提出できます。義理の親族の同意も、家庭裁判所の許可も必要ありません。

届出をすると、婚姻前の戸籍に戻るか、新しく自分の戸籍をつくるかを選ぶことになります。氏が変わるため、住民票・マイナンバーカード・運転免許証・銀行口座・年金の記録など、氏名を登録している先への変更手続きが別途必要です。

注意したいのは、復氏届では子どもの氏は変わらないという点です。子どもは亡くなった配偶者の氏のまま元の戸籍に残るため、親子で氏が異なる状態になります。

よくある疑問

Q復氏届は必ず出さなければならないのですか?
Aいいえ、任意の手続きです。提出しなければ婚姻中の氏のままで、そのことによる不利益はとくにありません。
Q復氏届を出すと遺族年金はどうなりますか?
A氏が変わっても遺族年金の受給資格や金額は変わりません。ただし年金の登録名義を変える届出は別途必要になるため、年金事務所に確認してください。
Q復氏届を出すと義理の親族との関係も切れますか?
A切れません。姻族関係を終わらせたい場合は、別に姻族関係終了届を提出する必要があります。

姻族関係終了届(死後離婚)とは|姻族関係を終わらせる手続き

姻族関係終了届は、亡くなった配偶者の血族(義父母や義理の兄弟姉妹)との姻族関係を終了させる意思表示の届出です(民法728条2項・戸籍法96条)。提出先は本籍地または住所地の市区町村役場で、こちらも法律上の期限はなく、配偶者の死後であればいつでも提出できます。

届出は生存配偶者が単独で行え、義理の親族の同意や通知は不要です。役場から義理の親族へ連絡が行くこともありません。効果は届出をした日から将来に向かって生じます。

主な効果は、義理の親族に対する扶養や互助の義務が及ばなくなることです(民法877条2項の特別な事情による扶養義務の可能性がなくなる)。一方で、氏は婚姻中のままで変わらず、旧姓に戻したい場合は復氏届を別に提出します。

よくある疑問

Q姻族関係終了届を提出しないとどうなりますか?
A義理の親族との姻族関係が続きます。日常的に何か義務が生じるわけではありませんが、家庭裁判所が特別の事情を認めた場合に扶養義務を負う可能性は残ります。
Q姻族関係終了届は相続に影響しますか?
A配偶者から受けた相続には影響しません。もともと義父母の相続で配偶者側の嫁・婿が相続人になることはないため、その点も変わりません。
Q一度提出したら取り消せますか?
A撤回はできないとされています。提出前に、必要に応じて役場の戸籍窓口や専門家に確認しておくと安心です。

子どもの氏はどうなるか|変更には家庭裁判所の許可が必要

復氏届も姻族関係終了届も、子どもの氏や、子どもと亡くなった親の血族との関係には影響しません。子どもは亡くなった配偶者の氏のまま、元の戸籍に残ります。

子どもを自分と同じ氏にしたい場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てます(民法791条)。許可が出たら、審判書を添えて市区町村役場に入籍届を提出することで、子どもが自分の戸籍に入ります。

申立ては子ども1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要です。子どもが15歳以上の場合は子ども本人が申立人になります。

提出先・必要書類・期限の比較

復氏届と姻族関係終了届の比較

項目 復氏届 姻族関係終了届(死後離婚)
目的 自分の氏を旧姓に戻す 配偶者の血族との姻族関係を終わらせる
提出先 本籍地または住所地の市区町村役場 本籍地または住所地の市区町村役場
必要書類 届書、本人確認書類、印鑑(役場により)、戸籍謄本(本籍地以外に出す場合) 届書、本人確認書類、印鑑(役場により)、戸籍謄本(本籍地以外に出す場合)
提出期限 なし(配偶者の死後いつでも) なし(配偶者の死後いつでも)
相手方の同意 不要 不要
氏の変化 旧姓に戻る 変わらない
子どもへの影響 子の氏は変わらない 子と父方(母方)血族の関係は変わらない
手数料 届出自体は無料 届出自体は無料

復氏届は手数料がかからず実費のみ発生

復氏届・姻族関係終了届そのものに手数料はかかりません。実費として発生するのは、添付する戸籍謄本などの取得費用と、子の氏の変更を申し立てる場合の裁判所費用です。

関連する実費の目安

項目 費用の目安
復氏届・姻族関係終了届の届出 無料
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 1通450円程度
除籍謄本・改製原戸籍謄本 1通750円程度
子の氏の変更許可の申立て 子1人につき収入印紙800円+連絡用郵便切手

手続きしない場合との比較

手続きをしない場合のメリット

  • 氏が変わらないため、免許証・口座・年金などの名義変更が不要
  • 子どもと同じ氏のままでいられる
  • 義理の親族との関係を波立たせずに済む

手続きをしない場合に残ること

  • 旧姓に戻りたくなった場合は、あらためて復氏届を出す必要がある(期限はない)
  • 義理の親族との姻族関係が続き、特別の事情があるときに扶養義務を負う可能性が残る
  • 自分が亡くなったとき、婚姻中の氏の戸籍のままになる

どちらの届出も期限がないため、急いで結論を出す必要はありません。四十九日や一周忌などの区切りまで様子を見てから判断する人も少なくありません。

手続きの進め方

復氏届・姻族関係終了届の進め方

  1. 1

    どちらの手続きが必要かを整理する

    旧姓に戻したいのか、姻族関係を終わらせたいのか、あるいは両方かを決めます。両方を希望する場合は2通の届出をそれぞれ提出します。

  2. 2

    提出先と必要書類を確認する

    本籍地か住所地の市区町村役場に、届書のほか本人確認書類や戸籍謄本が要るかを事前に問い合わせます。

  3. 3

    役場の戸籍窓口で届出する

    期限はないため、体調や気持ちが整ったタイミングで構いません。受理されると戸籍に記載されます。

  4. 4

    戸籍の記載を確認し、名義変更を行う

    復氏した場合は、住民票・マイナンバーカード・免許証・銀行口座・年金などの氏名変更を進めます。

  5. 5

    子の氏を変える場合は家庭裁判所へ

    子どもを自分と同じ氏にしたいときは、子の氏の変更許可を申し立て、許可後に入籍届を提出します。

復氏届と姻族関係終了届の違いは明確

復氏届は「氏」、姻族関係終了届は「姻族関係」と、変わるものがまったく違います。どちらも期限がなく、相手方の同意も不要で、相続財産や遺族年金を失うこともありません。必要な手続きを見きわめ、落ち着いたタイミングで判断してください。

具体的な戸籍の扱いや子の氏の変更で迷う場合は、市区町村の戸籍窓口や司法書士・弁護士など専門家に相談すると確実です。

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見積もり前の確認リスト

  • 復氏届(氏を戻す)と姻族関係終了届(姻族関係を終わらせる)の違いを理解しているか
  • どちらにも法律上の提出期限がないことを確認したか
  • 提出先が本籍地または住所地の市区町村役場であることを確認したか
  • 必要書類(届書・本人確認書類・戸籍謄本の要否)を役場に事前確認したか
  • 子どもの氏は自動では変わらず、家庭裁判所の許可が別に必要だと理解しているか
  • 届出をしても相続財産や遺族年金は失われないと確認したか
  • 復氏する場合の住民票・免許証・口座・年金などの名義変更を洗い出したか