法定相続情報一覧図は、被相続人と法律上の相続人を1枚の紙にまとめ、法務局が戸籍と一致していると証明する制度です。戸籍の束を何度も提出せずに済むため、複数の機関に同時に手続きを進めやすくなりますが、作成は相続人自身が行い、交付まで数日かかることがあります。
法定相続情報一覧図は戸籍の束の代わりに使える無料の証明書
法定相続情報一覧図は2017年に始まった制度で、被相続人と相続人の関係を法務局が確認し、戸籍の束の代わりに使える写しを無料で交付します。相続登記や銀行の預貯金手続き、相続税申告、年金手続きなどで利用可能です。
ただし、相続税申告では続柄を戸籍どおりに「長男」「養子」などと図形式で記載した一覧図でなければ使えず、単に「子」と書いたものや列挙形式は使えません。
メリット
- 戸籍の束を複数回取り寄せる手間や費用が減る
- 各手続き先に同時に提出できるため手続きが早く進む
- 写しの交付は必要な通数を無料で受け取れる
注意点
- 交付までに数日かかり即日受け取りはできない
- 相続放棄した人も一覧図に載るため別途証明書が必要
- 一覧図だけで遺産分割の内容は証明できない
提出先が複数なら作る価値があり1〜2か所なら不要な場合もある
提出先が銀行や証券、不動産登記、相続税、年金など3か所以上ある場合、一覧図を作ることで戸籍の束を何度も提出せずに済み、手続きがスムーズになります。
一方、手続き先が1〜2か所であれば、戸籍の束を使い回す方が早いこともあるため、作成は任意です。
申出は相続人本人か親族・司法書士などの代理人が行う
申出できるのは相続人本人か、親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)または弁護士・司法書士などの資格者に限られます。友人やその他業者は代理人になれません。
一覧図は申出日の翌年から5年間法務局に保管され、その間は無料で再交付を受けられます。ただし再交付を受けられるのは最初に申出した人だけなので、申出人は今後の手続きをまとめて進める窓口役の相続人にするとよいでしょう。
よくある疑問
- Q法定相続情報一覧図は必ず作るもの?
- A任意で、戸籍の束を提出すれば全ての手続きが可能です。提出先が多いほど作る価値があります。
- Q再交付は誰でも受けられますか?
- A再交付を受けられるのは最初の申出人だけで、他の相続人は受けられません。
申出先は4つから選べて郵送もできるがオンラインは不可
申出先は被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地のうち1か所を選べます。窓口へ持参するか郵送で申し出ることができ、返信用封筒と切手を同封すれば郵送で受け取れます。
2026年10月時点でオンライン申出は法務局から案内されていません。
申出の手順
- 1
申出書の記入
法務局の申出書様式に利用目的や必要通数、受け取り方法などを記入します。
- 2
必要書類の準備
被相続人の戸籍一式や住民票の除票、相続人の戸籍、申出人の本人確認書類などを揃えます。
- 3
申出先の選択と提出
4つの申出先から選び、窓口持参または郵送で提出します。
- 4
交付の受け取り
申出から数日かかるため、余裕を持って受け取りに行くか郵送を利用します。
一覧図は図形式で続柄は戸籍どおり書くと多くの手続きに使える
一覧図はA4縦の白紙に被相続人の氏名や死亡日、相続人の氏名・生年月日・続柄(長男・養子など戸籍どおり)を図形式で記載します。続柄を単に「子」と書くと相続税申告や家庭裁判所で使えないことがあります。
相続人の住所を記載すると、不動産登記の際に住民票が不要になるなどの利点があります。手書きでも明瞭に読めれば問題ありません。
続柄の書き方による手続きの違い
| 書き方 | 相続税申告での利用 | 家庭裁判所での利用 |
|---|---|---|
| 戸籍どおり(長男・養子) | 使える | 使える |
| 単に「子」と記載 | 使えない | 使えない |
| 列挙形式 | 使えない | 使えない |
登記は番号で添付省略、銀行や年金は写しを提出
提出先ごとの法定相続情報一覧図の扱い
| 提出先 | 利用できる内容 | 注意点・条件 |
|---|---|---|
| 不動産登記 | 戸籍の束の代わり。2024年4月1日以降は法定相続情報番号で写し添付省略可 | 番号は登記専用。住所記載で住民票不要 |
| 銀行(ゆうちょ・三菱UFJ・三井住友) | 戸籍の代わりに使える | 三井住友は作成日から1年以内の写しが必要 |
| 相続税申告 | 図形式・続柄が実子か養子か分かる一覧図が使える。コピー可 | 養子がいる場合は養子の戸籍も添付 |
| 年金手続き | 遺族年金など一部の手続きで戸籍の代わりに使える | 寡婦年金や老齢年金には使えない |
| 自動車の名義変更 | 戸籍の代わりに使える(関東運輸局の例) | 詳細は運輸局に確認 |
| 家庭裁判所の遺産分割調停 | 戸籍の代わりに使えるが図形式で戸籍どおりの続柄が必要 | 列挙形式は不可 |
交付は無料だが即日ではなく、申出人が受け取る必要がある
一覧図の写しは必要な通数を無料で交付してもらえますが、交付までの日数は法務局で異なり、公式な標準日数は示されていません。名古屋法務局では数日、大阪法務局では一定期間かかると案内しています。
申出から3か月以内に受け取らないと廃棄されるため、交付までの時間に余裕を持つことが必要です。
よくある疑問
- Q交付はどのくらいの日数がかかりますか?
- A法務局は標準日数を示していませんが、数日から1〜2週間かかる例があります。急ぐ場合は申出先に確認してください。
- Q申出人が亡くなった場合はどうなりますか?
- A再交付は最初の申出人だけが受けられるため、他の相続人が再度申出が必要か法務局に確認してください。
兄弟姉妹が相続人なら特に効き、外国籍の人がいると使えない
読者の状況別の一覧図の作り方と注意
| あなたの状況 | 一覧図の価値 | 作り方・注意点 |
|---|---|---|
| 親が亡くなり、子(兄弟)で銀行2つ・実家の登記・相続税申告をする | 作る価値が大きい | 図形式で続柄は戸籍どおり「長男」「長女」など。住所も書き、提出先数+予備の通数を申出 |
| 夫・妻が亡くなり、自分と子が相続人。遺族年金も請求する | 作る価値あり | 遺族年金の請求で戸籍の代わりに使える。ただし年金を受け取れる人は年金の法律で決まり、一覧図とは別に判断される |
| 子も親もいない人が亡くなり、兄弟姉妹(甥姪)が相続人 | 特に効く(戸籍20〜30通の例) | 兄弟姉妹は戸籍広域交付が使えず集めるのが大変なため、一覧図の効果が大きい |
| 相続人の中に相続放棄した人がいる | 作れるが放棄した人も載る | 放棄の受理証明書を別途添付し、家裁手続きでは追加戸籍が求められる例あり |
| 親が亡くなった後、手続き中に兄も亡くなった | 2枚(被相続人ごと)必要 | 数次相続となり、司法書士など専門家に相談することを検討 |
| 亡くなった人・相続人に外国籍の人がいる | 使えない | 戸籍がないため、従来どおり戸籍の束を揃える必要がある |
| 手続き先が年金だけ・口座1つだけ | 作らなくてもよい | 戸籍の束で済む方が早い場合がある |
| 不動産名義変更(相続登記)を自分でする | 作ると法定相続情報番号で添付省略可 | 番号は一覧図右上に記載。5年以上経過すると使えない場合あり |
| 司法書士・税理士に相続を任せる予定 | 代理で申出可能 | 報酬は事務所ごとに異なるため見積もりを取る |
よくある疑問と回答
よくある疑問
- Q費用はいくらかかりますか?
- A写しの交付は無料ですが、戸籍謄本などを集める手数料(戸籍450円、除籍・改製原戸籍750円程度)と郵送費用は自己負担です。
- Q申出書はどこで入手できますか?
- A法務局の公式サイトで申出書様式のPDFがダウンロードできます。
- Q一覧図は自分で作れますか?
- A作れます。法務局が公開するExcelのひな形や記載例を参考に、手書きでも明瞭に記載すれば問題ありません。
- Q郵送での申出は可能ですか?
- A可能です。返信用封筒と切手を同封し、申出先の法務局へ郵送してください。
- Q一覧図に有効期限はありますか?
- A制度上の有効期限はありませんが、三井住友銀行など一部の機関では作成日から1年以内の写しを求める例があります。
- Q相続放棄した人は一覧図に載りますか?
- A載ります。放棄の証明は別途必要です。
申出には出生から死亡までの戸籍と住民票の除票が必要
申出に必要な主な書類と取得先
| 書類名 | 取得先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍 | 本籍地の市区町村役場 | 子・配偶者・親は広域交付でまとめて請求可。兄弟姉妹は不可 |
| 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地の市区町村役場 | 附票は広域交付不可 |
| 相続人全員の現在の戸籍(謄本または抄本) | 各自の本籍地の市区町村役場 | 死亡日以降の証明日付きが望ましい |
| 申出人の本人確認書類のコピー | 手元 | 運転免許証の表裏やマイナンバーカード表面など。返却されない |
| 相続人の住民票(住所を書く場合) | 各自の住所地の市区町村役場 | 住所記載で登記などで住民票不要になることがある |
| 委任状・代理人の身分証明書の写し(代理申出の場合) | 手元 | 委任状は原本と相違ない旨の記載があればコピーも可 |
参考記事と関連リンク
見積もり前の確認リスト
- 手続き先が3か所以上か確認する(複数なら一覧図作成を検討)
- 申出人(申請者)を決める(再交付はこの人のみ可能)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を全て揃える
- 相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本を揃える
- 申出書に提出先の通数+予備の通数を正確に記入する
- 続柄は戸籍どおり(長男・養子など)で図形式にまとめる
- 申出先の法務局を4か所の中から選び、郵送か窓口提出を決める
- 申出人の本人確認書類のコピーを用意する
- 交付まで数日かかるため、急ぎの手続きは戸籍の束で先に進めることを検討する